驚異の部屋クンストカメラ
海軍広場前の公園を抜けて宮殿橋の方へ、橋を渡った先にあるクンストカメラを目指して歩いていく。クンストカメラはサンクトペテルブルグでイルクーツクのユリアが唯一「ここは是非!」と言っていた場所。一体どんな場所なんだろうか。
宮殿橋の近くを通りかかった時、ネヴァ川の遊覧船に乗る人たちを見かけて、僕も乗ってみたくなった。橋の上を歩いていると肩車をしている人がいて、なんか楽しそうだった。「肩車か〜いいな」やる相手もしてくれる相手もいない。
橋の上から目的地のクンストカメラが見えた。なかなかオシャレな色の可愛い建物じゃないか。遊覧船の停まり場が目の前にあるし、ツアーバスも建物の前に止まっている様子だったので、もしかしたらなかなか有名な観光名所なのかもしれない。
入口がわからずに少し迷っていると、建物の角に案内板を見つけたので、チケットを買って中に入った。
「何この腹巻したくたびれたおっさん?」
ガイドブックを見てみると、クンストカメラは18世紀初頭に、ピョートル大帝「あ〜エカチェリーナと同じ大帝の人か」によって創設された博物館。バロック様式の建物は1734年に完成し、以後『クンストカメラ』(美術や骨董品の陳列室の意味)の愛称で「レトロカメラ博物館とかじゃなかったのね」呼ばれるようになった。現在の正式名称は、ピョードル大帝記念人類学・民族学博物館である。ロシアで最も古い自然科学博物館であると言われる。「なるほど」
館内にはピョートル大帝が個人的趣向により集めたコレクションを中心に並べられている。世界中のあらゆる民族資料が集められる中で、最も有名で人気なのが『「人体標本コレクション」奇形児や胎児の標本の展示である』「ふむ、そうきたか」また最もグロテスクな所蔵品は、エカチェリーナ1世の愛人だったウィレム・モンスとその妹アンナ・モンスの頭をアルコール漬けにした標本。「ん、どういうこと?」
残念なことに「人体標本コレクション」の展示の写真撮影は禁止されている。骸骨などとは違って、人間味のある肉感を残し、光のない虚ろな眼球にさすがに驚きはしたけれど、そうは言っても自分と同じ人間という生き物なので、ショックを受けたりキモいまで言うのはいささか失礼な気がした。
苦手な人もいるだろうが、資料として価値があるから展示されてるのも事実。遊びで展示が残ってる訳でもないし、僕のつまらない感想ごときでなくなることもありえない、そんな小さなものよりはるかに重く意義深いのだろう。
館内には日本から集められたものもあり、鎧武者や茶摘みの格好なども展示されていた。「宇治茶て」
3階には地球儀や分度器が置かれていたので天文学の資料展示なのかもしれないが、よくわからなかった。
僕は絵画や建築などの芸術・経済活動には多少興味があるけれど、正直なところ人類学・民族学の展示にはあまり興味がない。理科でも「生物」が一番退屈で、社会科の歴史では現代社会によりつながりのある政治・法・経済・国際社会の学習がおろそかになるくらいなら、原人やマンモスなどを熱心に追いかける必要はないと考えている。なのでこの旅においても少数民族に会いたいとか未開社会に触れたいとか、そういう気持ちは一切ない。逆にそういうのを楽しめる人もいるだろうけど、まぁその点に関する楽しさは僕にはないということです。それがよく分かる。ここは面白くない、少なくとも僕にとってはね。
と言う訳でさっさと抜けてしまうことにした。
2階の通路から1階へ降りて、変な人形のある入口へ戻ってきた。
そういう訳でバイバイ。ここに貴重なものが展示されているということは理解しているつもりだ。だけどその価値と僕の興味は関係がない、また来ることは多分ないだろうが、お互いそれで困ることもあるまい「まぁ、そう寂しそうな眼で見つめてくれるなや」
出口は中庭へつながっていて、そこから大通りへ出て歩いて行った。
つづく