再会と再別の日拉逆転
今日はアルトゥーが日本に出発する日。これから1年間、兵庫県の安泰寺で禅修行をする。自分が世界一周の旅に出ていつ帰るか分からない身で言うのも何だけど、アルトゥーの親御さんは一体どう思ってるんだろうか、非常に気になるところだ。
朝食は昨日のカレーの残りに牛乳を少し足してカレースープにしてみた。これは昨日よりも旨く感じた。朝ご飯を食べ終わると「これ記念にあげるよ」とマジックテープでカバンに貼りつくラトビアの国旗をもらった。「こりゃまた失くせないものが増えてしまった、色々ありがとうな」とお礼を言った。
僕もアルトゥーもパッキングを済ませ「パスポート」「ある」「金」「ある」「飛行機のチケット」「ある」「スマホ・カメラ」「ある」とお互い忘れ物がないか荷物の最終確認をしてバックを背負った。そして家の鍵をかけて二人で確認しイェルガヴァ駅へと歩いて行き、切符を買ってリガ行きの列車が来るのを待った。
やがて到着したリガ行きの列車に乗るアルトゥーの後ろ姿を見て、案外自分も出発するときはこんな感じだったのかなと思い返していた。
僕の出発の時は不安しかなかったけど、アルトゥーももしかして同じだったりするのだろうか、異国へ長く旅立つ人の気持ちを少し聞いてみたい気もした。でも、それについて聞くのは何故か野暮な気がしたから、気楽な感じで「まぁ、頑張れよ」とだけ言っといた。
リガ駅の改札を出たところで待っていたロディオンと合流し、今度は市バスに乗り換え空港へ。バスの中でロディオンはアルトゥーと何か話した後、少し眠そうにしていた。昨日は朝からイベントの準備があって忙しかったからかもしれない。40分くらいバスに乗り、リガ国際空港に着いた僕らはチェックインカウンターを探した。
アルトゥーのチェックインカウンターを見つけて搭乗手続きを済ませると、階段を登って二階のレストランで三人でジュースを飲みながら話をした。
「まさか1年前にインドで数時間会っただけの友達がラトビアまで来るとは思わなかったよ」「僕の方こそ、その再会した友達が入れ違いで日本に行くとは思わなかったさ」「ウーティで初めて会った時が懐かしいな」「ああ」そんな昔話をしていたらすぐに搭乗時間になってしまった。
先にロディオンがアルトゥーに別れと激励の挨拶をした。僕の方は「次に会えるのはいつになるかわからないけど元気でな、今度は日本で会おう」とそう約束して握手をした。「まさかこんな形でまた会って別れることになるとは」なんてそんなことを考えながら、徐々に見えなくなるインドで出会ったラトビア人の友人に「またな」と手を振った。
つづく