アルトゥー出発前夜のリガ旧市街
イェルガヴァから1時間ほどでリガに戻ってきた。ロディオンのイベントまではまだ時間があるので、旧市街を散策することに。タリンからリガに着いた時に、バスターミナルから見えた川向いの倉庫みたいな建物は中央市場だったらしい、ちょっと中を覗いてみることにした。
アルトゥーが言うには「ヨーロッパで一番でかい市場」らしく、実際、ドーム型5棟の中央市場は外まで店が溢れててでかかった。
チーズもこれでもかとたくさんの種類があり、買い物をしているおばさんたちもどれにしようか悩んでいるようだった。
ケーキはホールサイズでも買えるけれどバラ売りもしていて、そんなに高くないから少しずついろんな種類のものを買って食べ歩くのも良さそうだった。けど、見た目がどれもすごく甘そう。おそらく3個も食べれば限界だろう。
肉のコーナーでは店員のおばちゃんが陽気に二刀包丁で肉をさばき、魚のコーナーではボトルから干物が溢れていた。
建物の外に出てみるとこちらでは果物や野菜、花などが売られていて、夕飯の材料なのか、おばさんたちは大きな袋にたくさん買い込み、重たそうな袋を持って忙しそうに歩き回っていた。家族の料理を作るためなのだろう大変そうに見えた。
花が綺麗だったので、買い物帰りに買っていくのも別に悪くはなさそうだと思った。何でもない普通の日を過ごせることこそ、それを当たり前に支えてる人こそ、感謝されるべきで報われるべきなのかもしれないと、そんな考えが頭をよぎった。
市場を歩いていると「クワスじゃねぇか」と見たことあるものを発見してちょっと嬉しくなった。ロシアでもよく飲んだクワスの移動販売。アルトゥーの家で朝食に黒パンが出てきたし、ここは旧ソ連圏で、プロンビールのアイスもあったから、クワスもあるだろうと思ってたらやっぱりあった。
店員のお兄さんに頼んで500ml分をペットボトルに詰めてもらい、カップを二つもらって飲んだ。久しぶりに飲むと「あれ?こんな味だったっけ」と思うのだが、この夏の思い出の飲み物でもある。
中央市場を後にして、旧市街を突っ切りドゥアマ広場からリーガ大聖堂を見上げた。
そして猫に見下された。なんかこの街は猫が多い気がした。猫の家という建物があるくらいだか、そのせいもあるのかもしれない。
城壁方面へと歩いていると、聖母受難教会というローマカトリック教会があって中に入ってみた。やはりこれまでロシアを抜けて旅して見てきた教会とは、また少し違うと言う印象があった。
教会を出てトゥルァクシュニュ通りに入り、城壁伝いに歩いて行った。城壁を見ると、どうも登ってみたくなるのだが、リガでは登れず残念だった。そもそも侵入を防ぐものなのだから、簡単に登れても困るのだろう。
城壁の側には大砲が置いてあり、僕らは火薬塔まで歩いて行った。火薬塔は中世から残る歴史的な建物らしいが、それよりもどうしてここだけこんなに木が巻きついてていい雰囲気になってるのかということの方が気になった。
それからロディオンに会いに新市街の方へ向う途中、自由記念碑のところでイベントのようなものをやっていて、ディスプレイに「BALTIJAS CELAM 25」と表示されてあった。先日エストニアのタリンで独立回復のお祝いをしていたし、まぁ今度はバルト三国再独立25周年のセレモニーとか多分そんな感じなんじゃないかな。
そして僕らはロディオンのイベント会場に着くと、それは建物の間の広場で開かれたパーティで、ロディオンが勤める会社で作った木製パズルの5周年記念のお祝いだった。
ロディオンに会ったのは昨日が初めてだっていうのに、同僚の人たちとのパーティに参加してもいいのだろうかと聞いたら「お祝いだから良いよ」とロディオンも会社の人たちも、見知らぬ東洋人を気さくに歓迎してくれて嬉しかった。おかげで遠慮なくすっかりご馳走になってしまい、居心地よく過ごすことができた。
ロディオンの友達の女の子のマーラさんやデザイナー仲間のアニータさんと話しをしたり、ご飯をいただいたり、ケーキを食べて過ごした。あとアニータさんの犬のやたら細長く目が綺麗なニャンビーと遊んだ。ニャンビーは人が来るとすぐに寄ってくるけど全然吠えたりしなかった。そのせいか子どもたちの遊び相手になっていた。座っていると、アニータさんがワインを持ってきたから、それを飲みながら話をしてたけど、たくさん飲んでしまったせいか何の話だったか内容を全然覚えていない。
やがて暗くなりパーティもお開きになって片付けを手伝い、マーラさんやアニータさんにお礼の挨拶をして、ロディオンたちと夜の旧市街を駅まで歩いて列車に乗ってイェルガヴァへ帰った。イェルガヴァに着いて家まで歩いていると、アルトゥーの友人で合気道の先生をしているスタースと知り合い、一緒に話をしながら帰り、途中の道で別れた。
家に着くと作り置きのカレーがあったので夕食の準備を始めた。見た目はなかなかそれっぽい人生初小麦粉から作ってみたカレー。
これはなかなか「カレー的な辛味が足りない」不味くはないけど、味が弱くメリハリがなかった。辛さに関するスパイスの分量が間違ってたのかもしれない。これが日本のカレーライスかというと違う。「すまん。アルトゥー、日本でカレーライスを食い直してくれ」そう言って僕らは黙々とカレーライスを食べた。
つづく