世界一周をやめたい、海の近くで最後に温泉
12時8分に米子駅に着いた僕は、出国までの時間を潰せないか駅の観光案内所に聞きに行ってみた。そしたら近くに温泉があるらしく、目的地の近くなのでひとっ風呂浴びていくことにした。
「さて、今日は土曜日だから、次の電車の時刻は12時29分、5分後か。次は3時間後」
「高松町?高松町駅!あれか!」食欲があろうとなかろうと関係ない、悠長に米子駅でご飯を食べてる時間はなかった。「境線の電車の本数が少なすぎる」切符を買ってホームに入ろうとしたら、改札に立っていた駅員が切符を切ってくれた。「まだこういうのあったんだ」自動改札に慣れていたので新鮮だった。水木しげるの故郷が境港なので、境線の各駅は妖怪の名前が付けられていた。米子駅はねずみ男の駅だった。
どうやら旅のドラマは米子駅から既に始まってるらしい。電車を待っていると、やはりというか予想していた通りの電車が鬼太郎とねこ娘の音声アナウンスでホームに入ってきた。
この単線の電車に30分くらい揺られて、みなと温泉ほのかみがある高松町駅へ。車内には学校帰りの中学生や高校生が乗っていた。「夏休みかな?」部活の帰りの様子だったけど、どちらにせよもう夏休みのような感じだった。
ベンチの裏の微妙なところに看板があったので、温泉への行き方はすぐにわかったが、この炎天下にバックパックを背負って約2.5kmも歩くのかと少し嫌になった。
こっちから来て、
こっちに行かなきゃいけないけど、
今は温泉のためにこっちへ道を外れる。
歩いて歩いて、
散歩をしてる人やバーベキューをしてる大学生に道を尋ねたりして、
さらに歩いて、
歩いて歩いて「暑すぎる、長い、まだ着かないの!?」
炎天下の中、バックパックを担いで歩くこと40分。
「やっと着いた〜!」米子駅の観光案内所では徒歩約25分だって聞いたのに、えらい歩かされた気がする。汗を流しに来たのに暑すぎて汗だく、もう早く風呂に入りたい。
露天風呂では波の音が聞こえ、海のそばの温泉はなかなか気持ちよかった。生まれて初めて水風呂が最高だと思った。とにかくそれくらいの暑さだった。風呂を出て受付で国際旅客ターミナルまでの行き方を聞いたら、近くから巡回バスが出てると教えてくれた。よかった。これでまた駅まで戻らずに済む。
巡回バスが来るまで一息つくことにした。休憩所の畳の部屋で横になって、ビンのフルーツ牛乳を飲んだ。冷たくて甘く美味しかった。外の景色を眺めながら「本気で帰りたくなるなこれは」とつぶやいた。
つづく