モスクワの地下宮殿
僕はさっそく道に迷っていた。モスクワヤロスラブリヴァグザールのホームを出ると広場に出て、ポーラちゃんのお母さんのリラさんに教えてもらったメトロのコムソモーリスカヤの入口が分からず、広場の周りを行ったり来たりし、警察に道を尋ねても「あっちだ」と指をさすばかり。疲れてしまったので広場の隅の売店で、何か冷たい飲み物でも買って一息ついて考えることにした。
飲み物を買って売店の側で荷物を降ろし「地図ではこの近くのはずなんだけどな〜」とガイドブックを眺めていると、売店のお兄さんのムハンマドくんが「どこに行きたいの?」「メトロのコムソモーリスカヤを探しているんだ」「すぐそこの建物だよ、でもあそこは出口だからこの建物の反対側が入口になるよ」とガイドブックに書き込んでくれた。「なるほど〜わかった。ありがとう」とお礼を言って建物沿いに反対側へ向かった。
ムハンマドくんの言った通り建物の反対側に来たけれど、それらしい建物をすぐには見つけることができなかった。
辺りの建物をよくよく見てみると、入口の扉にロシアの鉄道マークがある建物があった。「そうかこの建物が駅だったのか」改めて周りの建物を見直すことにした。
すると、白い美術館みたいな建物にメトロのMのマークが見えた。「これがメトロの駅ってことか、なるほどね確かにメトロのマーク(M)があるけど、わかりづらいよ」
扉の中に入って進んでいくと、一変いかにも地下鉄といった雰囲気になってきた。「赤いラインの1号線コムソモーリスカヤはこっちか」床に書かれた案内表示に従って進んでいくと、カッサ(チケット売り場)が見えた。
メトロの料金は距離ではなく回数で決まり、どこまで乗っても料金は同じだった。とりあえず、モスクワに何日滞在するかも決めてなかったので、一回券を買って宿の最寄り駅まで行くことにした。自動改札のゲートを通って構内へ入る。
構内は本当に地下鉄かと思うくらい豪華な装飾で溢れていて驚いた。さすが世界で最も美しいと言われるモスクワの地下鉄。案内に沿って歩いていくと、各線ごとに降りる場所が分かれ、更に地下へ地下へと潜って行った。
ホームに着くと近くにいた人に、ビブリオチェーカ方面に行くのはどちらか尋ね電車に乗った。ホームも電車の中もフリーWiFiが利用できるようになってたので、スマホでネットに接続し念のためGPSを起動させて現在地を確認できるようにしておいた。
が、アナウンスも駅名表示もロシア語だったから、ぼ〜っとしていたらうっかり一駅乗り過ごしてしまった。ホームの反対側から折り返しの電車に乗ってビブリオチェーカに戻った。
間違いなくビブリオチェーカに着くと、今度は3号線に乗り換えなくてはいけないので、床の案内表示に従ってまた歩く。
階段を登ってたはずだったのに、今度は長いエレベーターを下った。宮殿というか、まるで迷宮だと思った。
無事に3号線のホームに着いて、アルパーツカヤ方面の電車に乗って一駅。ようやくメトロアルパーツカヤに着くことができた。
着いたホームから、また長いエレベーターを登り、通路を通って地上出口へ向かった。
どこの駅もこんな構造をしているのか、これは慣れるまで大変そうだ。メトロを使うときは時間も余裕を持って移動した方がいいなと思いながら、僕は扉の外へ出て行った。
つづく