『ロスからニューヨーク走り旅』僕の世界一周の旅に影響を与えた本【趣味】

こんにちは。こちらは僕の世界一周の旅に影響を与えた本の紹介記事です。2冊目の『ロスからニューヨーク走り旅 北米大陸横断単独マラソン5393㎞』は、冒険家・坪井 伸吾(つぼい しんご)さんの2005年の旅の記録です。オススメの本ではあったのですが、ずっと旅仲間に紹介するような本ではない気がしていました。僕がこの本を手に取ったのは旅とは関係なく、ランニングが趣味と言えば趣味なので「いつかフルマラソン完走してみたいな〜」とかそんなことを考えていた時のことでした。でもこれで「アメリカを走って渡れるのか〜」と思いましたね。

 

これまで走り旅なんてしたことないくせに、いきなり北米を横断しようと考えるバカさは昔と何も変わっていない。

(坪井 伸吾・『ロスからニューヨーク走り旅 北米大陸横断単独マラソン5393㎞』ラピュータブックス・2012年・12ページ)

 

『ロスからニューヨーク走り旅』の紹介

旅する冒険家・坪井伸吾は、LA‐NYランアクロス米国大陸横断マラソンコースをザックひとつ背負って、ただひたすら走り続ける。誰に喧伝するわけでもない独りラン。気温45度を超える酷暑のなか記憶を失いながら走る。一転、峠の野宿では寒さで寝られない。無人の砂漠やいくつもの山々を越え、5400キロもの過酷で忍耐を強いられる「走り旅」の日々。

(Amazon・内容「BOOK」データベースより)

 

感想

『ロスからニューヨーク走り旅』は、冒険家の坪井 伸吾さんが2005年にアメリカ大陸横断レースの一つ、ラン・アクロス・アメリカのコースを参考にしてロサンゼルスからニューヨークまでをサポートなしで独りで走った旅の記録です。それまで走り旅はしたことがなかった坪井さんが、準備もそこそこ、ダメだったらそれでまぁなんとかなるさとデタラメな感じで走り始めてしまったというからすごい。しかも、何故「走る」ことにしたかというと「歩く」と時間がかかりすぎるからという理由。天災・渇水・餓死で命の危機に何度も直面し、その度に水・食料・安全なルート・安宿をその場その場で探し、西海岸で太平洋に触れた手は遥か先のニューヨークまで行くんですから驚きました。

 

二年前にマンションの階段の上り下りでヒザが痛くなった中年が、自己流の準備でここまで来たのだ。人間やればできるのだ。

(坪井 伸吾・『ロスからニューヨーク走り旅 北米大陸横断単独マラソン5393㎞』ラピュータブックス・2012年・144ページ)

 

この本はですね、やってることはとてつもないのに、この旅の始まりも終わりも実にあっさりとしたものです。あっけないとすら言えるかもしれません。こうやると決めたことを淡々とこなす作業のような日々の連続。これだけ聞くと「そんなのどこが面白いの?」という声が聞こえてきそうです。人との出会いを求めたわけではない、自分の価値観が変わるほどの文化の違いを体感したかったわけじゃない、とにかく進んで疲れたら眠る、ただそれだけ。旅情を感じる要素がない。だから、僕はこの本を今まで紹介できなかったのかもしれません。

 

今日も気温はグングン上がる。次の村に売店はあるのか。水は本当に売ってるのか。この状況ではもう「なかった」じゃ、許されない。

「何やってんだ、乗れよ」

七〇年代のフォードの乗用車が泊まり、赤い長髪の男が顔を出した。

「ありがとう。でもオレ走ってんだ」

「ああ?」

まさか断られるとは思っていなかったのだろう。男は何言ってんだか分からんって顔だ。

「いや、だって……。オマエおかしいぞ。死ぬぞ」

「うん、大丈夫だ」

「なぜだ?」

なぜ、なぜなんだろう。自分でも分からない。なぜ?

「走るのが好きなんだ」

ウソではないけど、答えになっていない。

「本当にいいんだな、オレもう行くぞ」

ちょっと頭がおかしいんだな、という顔で男は走り去った。

「WHY?」聞くほうはたった一言なのに、答えるほうからすると途方もなく難しい質問だ。

(坪井 伸吾・『ロスからニューヨーク走り旅 北米大陸横断単独マラソン5393㎞』ラピュータブックス・2012年・96-97ページ)

 

トイレの場所がわからず焦り、犬に吠えられ、警察には職質される。もしバイクがあれば、サイクリストなら、ヒッチハイクができたら、あの時親切な人の車に乗せてもらっていたら。それでも「これでいいのだ」と言ってまた走りだす坪井さんはカッコイイ。こういうスタイルだからこそ出会えた人々とのやりとりがまた素敵なんだ。ごめん、この旅の本はね、やっぱ抜群に面白い。

 

坪井さんがどんな風に走り出したのかというと、それが全然気負いがなく肩の力抜けまくり「気持ちで負けてる」なんて怒られそうな感じ。でも僕にはこの考え方はよくわかりました。

 

確かに、この期に及んで熱さの片鱗もないのは自分でもヘンだと思う。普通はこんなとき、「根性」とか書いた鉢巻をキリリと巻き、ふんどしでも締め、「がんばってこいよ」との歓声を背に、気合いもろとも非日常に飛び込むべきだ。その儀式は自分の気持ちに区切りをつけるために、また周りが納得して安心するためにきっと必要だ。そんな手続きを経ない僕は、傍から見れば普段着のまま断崖絶壁の淵から踏み出そうとしているようなものだろう。大丈夫、って言ってもなんの説得力もありゃしない。でも日常と非日常の境目というヤツが僕にはどうもよく自覚できない。僕の場合は川の水が気づいたら海の一部になっていたように、いつのまにか自分がゆるやかに変化していくのだ。

(坪井 伸吾・『ロスからニューヨーク走り旅 北米大陸横断単独マラソン5393㎞』ラピュータブックス・2012年・35ページ)

 

準備にしても参考にした地図が古かったりで「この先に道はあるのか?」といった具合だし、道を聞いても「わからない」って回答や勘違いばかりだし、倒れそうになって見つけたガソリンスタンドにはもう様づけで敬ってしまうくらいの出たとこ勝負。想定外(?)のトラブルの連続。でもその都度自分で考えて答えを出して行く。

 

昔から、こういうやり方が好きだった。準備をすればするだけ、できる可能性が上がれば上がるだけ、なんだかつまらなくなってくる。そんなのは省略して白紙の状態から始めるのが理想だ。邪道もいいところだが、白紙だと何もかもが吸収できる。答えを知っていたらラクラク避けられる「初歩の初歩」の失敗もする。エネルギーも時間も金も無駄遣いする。でもそれでいいし、それでこそ自分でやっている気分になれる。

(坪井 伸吾・『ロスからニューヨーク走り旅 北米大陸横断単独マラソン5393㎞』ラピュータブックス・2012年・37ページ)

 

そして長く継続することをなすために必要な心持ちは「これでいいのだ」というユルさだと言う。これが大事で、これがなければ精神的に参ってしまうだろうし、嫌だったら辞めればいい、ただそれだけのことで、悩むことじゃないと。

 

雨がひどいときは、まあ風がないだけマシか、と思い、雨と風があっても、あのときよりはマシか、と。常に都合のいいほうに考えるから、悩まない。

何があっても基本は「これでいいのだ」。

長い一人旅でこのユルさは結構大事だ。もしこれができないと、きっと体力より先に精神的にダメになるだろう。

(坪井 伸吾・『ロスからニューヨーク走り旅 北米大陸横断単独マラソン5393㎞』ラピュータブックス・2012年・128-129ページ)

 

なんか話がまとまらなくなってしまいましたね。長くなってきたのでこのあたりで締めたいと思います。僕がこの本で一番参考にしたのは感想に一切含まれていませんが、終わり方についてです。僕の世界一周の旅の終わり方はこうしようというものがありました。それができれば、まぁいいかなというようなそんな程度のことですが、最低限それはできたのでよかったかなと満足しています。

 

最後に、僕が今回この本を紹介する気になったのは、ジョージアの宿で「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」を行ったなんて大学生に会った時に、ふと「ジャーニーランナー?」という言葉がよぎったのを思い出したからです。

 

自分ですら知らない自分のチカラを知る。これはヒトにとって至福の喜びであり快感であると思う。そしてその機会は年を経るごとに確実に減る。四歳の娘を見ているとつくづく感じる。彼女は昨日できなかったことが今日でき、三十分前にできなかかったことが今いきなりできたりする。「見て、見て」とはじけるように笑うその姿を見ていると羨ましくてしかたがない。

<なぜ、その機会が減るのか?>

答えは分かっている。できそうにもないことはしないからだ。

理由はいくつもある。

ひとつは単に怖い。自分がどうなるか分からないことをするのは怖い。

ひとつは割に合わない。苦労が報われる保証がないことに労力をつぎ込むのは損だと考える利害打算。

ひとつは世間の目。何バカなことやってんのよ、このヒト、と見られるのが怖い。

でも、「できるだろう」と思われることをやったって、未知の自分、まだ触れたことのない自分に気づくことはないだろう。明らかに能力以上のもの、もしくは不可能なジャンルにトライしたときに初めて、それに触れられるのだと思う。

(坪井 伸吾・『ロスからニューヨーク走り旅 北米大陸横断単独マラソン5393㎞』ラピュータブックス・2012年・62-63ページ)

 

二年前、この本を読んだ翌朝、仮面ライダーがテレビでやってたから確か日曜日だったと思います。500円玉だけ持って散歩に出かけたはずが「ちょっと試してみるか、疲れたら途中でやめて帰ればいい」と思って走ってみたら、時間はかかったけど43km走ってしまった。あまりに何でもない日に突然のことだったので「あれ、できた」と感激も薄かったのを覚えています。家に帰って普通に風呂入って飯食って寝ました。さらに翌日体がガタガタになって「まぁ普通こうなるよな」と思いましたが、でも意外になんとかなるもんだなとも思いました。僕もまだまだ負けてはいられませんね。

 

著者の紹介

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