小さな世界の三大天使

4人の思い出のタリンの港

「ちょっと待ってて今そっちに行くから」そう言って飛び降りると意外に高さがあったのか、着地をした時に足の裏が少しじ〜んとした。「宿移ってきたんだね」「うん、ニノはここで何してるの?」「ん?別に何もしてないよ、3人は?」「俺らはヘルシンキ行きのフェリーチケットを買いにフェリーターミナルに来たんだけど」「それなら多分ここじゃないな、上に登ってた時にあっちでフェリーの出入りが見えた。んと地図持ってる?」「あるよ」「地図で言うとこっちだな、この大通りを道なりに行けば見えてくるだろ」「おお、ありがとう」「いえいえ」「良かったらニノも一緒に来ない?」「僕も?う〜ん、まぁ特にやることがあるわけでもないし、暇だから行ってみるか」こうして3人と一緒にフィンランドのヘルシンキ行きのフェリーチケットを買いに行くことになった。

 

フェリーターミナル

フェリーターミナル

 

チケット窓口

チケット窓口

 

話をしながら歩いていると、3人はブラジルからスペインに建築を学びに留学している学生で、今は休みだからヨーロッパを巡っているらしい。そうこう話をしているうちにフェリーターミナルに着いて、4人でチケット窓口を探しヘルシンキ行きのチケットを聞いてみたが、ヘルシンキ行きのチケットは近くにあるもう一つのターミナルDで売っているらしいのでそっちへ向かった。

 

向かいのターミナルへ

向かいのターミナルへ

 

ターミナルD入口

ターミナルD入口

 

ターミナルD

ターミナルD

 

建物の中に入ってエレベーターで二階に上がるとチケット窓口があり、3人はそこで値段を聞きに行った。しばらくして戻ってきたので「チケット買えた?」と聞いてみると「ちょっと値段が高い」らしい。3人が相談し始めたので「っても、ヘルシンキにフェリーで行くならここしかないんだろ?それならもうしょうがないんじゃないか?」と言うと「それもそうだな」ということで、3人はまた列に並んだ。

 

チケット窓口

チケット窓口

 

無事に明日出発のフェリーチケットを買うことができた後は、一緒に宿に戻ることになって「昨日こっちの宿に泊まれなくてラッキーだったぞ、パーティーがあって夜めちゃくちゃうるさかったぞ」「あらま」みたいな取り留めのない話をして港を歩いた。

 

フェリーターミナル近くのレストランの看板

フェリーターミナル近くのレストランの看板

 

ジョアオもタイースもガブリエルも3人ともとにかく陽気で、かと言ってこちらに合わせることを求めるわけでもなく気楽で良かった。「これがラテン系か」と一緒にいて楽しかった。

 

陽気なブラジリアンズ

陽気なブラジリアンズ

 

4人を見つめるかもめ

4人を見つめるかもめ

 

ガブリエルは3人の中で一番陽気で良いやつで、GoProが気に入ってるのかいつでもどこでもGoProでみんなの写真を撮っていた。タイースはしっかり者でみんなをまとめるお姉さん的な存在。

 

ガブリエルとタイース

ガブリエルとタイース

 

ジョアオはマイペース。写真の趣味と話し方が一番似ていたせいか気が合った。一人だけやけにでかいリュックを背負ってたので、気になって中身を聞いてみたらカメラのレンズバックになってて「これだけ入ってりゃ重いだろう」と、ジョアオはレンズ沼にはまっていた。気の毒に、その沼は深い。

 

ジョアオ

ジョアオ

 

そんな写真好きの集まりということもあって、港で各々好きな写真を撮りながら歩いていたせいで、歩く速さは笑ってしまうほど遅かった。

 

4人の思い出のタリンの港

4人の思い出のタリンの港

 

水たまりに写ったタイース

水たまりに写ったタイース

 

こんな調子で旧市街へとゆっくり戻っていった。帰る途中にスーパーマーケットがあって、モスクワでラーメンを作るために使った醤油が余っていたのを思い出し、折角だから3人に醤油ラーメンを作ってみようと少し寄って買い出しをしてから宿に帰った。

 

ラーメンの材料

ラーメンの材料

 

僕が醤油ラーメンを作り、ジョアオとタイースとガブリエルはビールと魚のマリネなどのつまみを用意してくれた。ラーメンは材料の時点でモスクワで作った時と大差なく「これはまた、すき焼きラーメンになるかもしれない」と思っていたらやはりそうなってしまった。

 

ビール

ビール

 

すき焼きラーメンの再来

すき焼きラーメンの再来

 

味は特に問題なかったので3人とも「おいしい」と言って食べてくれてありがたかった。それにしてもエストニアでラーメン、ビール、魚のつまみで晩飯とはなかなか良い。3人のビールも魚のつまみも旨かった。

 

旨かったみたい

旨かったみたい

 

しばらくしてトーマスとスーザンという、若めの少しちゃらい感じの男女二人組に声をかけられ、たまたま近くにいたブレイザーという女の子も一緒にバーに飲みに行くことになり、食器を洗って宿を出た。

 

バーの店内

バーの店内

 

酔っ払う4人

酔っ払う4人

 

トーマスとスーザンの案内でバーに着き乾杯し酒を飲んでいると、トーマスが「でかいジェンガを使ってみんなの酒代をかけてゲームをしよう」と誘ってきて「僕はゲームは弱いし、酒ももうお腹いっぱいで入らないので遠慮する」と断ったが、ジョアオとタイースとガブリエルは話に乗った。ブレイザーは酔っ払っていたので「私はもう帰るわ」と言い「夜道の女の子の一人歩きは危ないから」と僕も一緒に宿に帰ることにした。一人で行ってしまうブレイザーを追いかけて、3人とは「そのうち帰るね〜」「おう、ほどほどにな」と言って別れた。

 

バーを出るとブレイザーがどっちに行ったら良いかわからず立ち尽くしているので「こっちだよ」と宿まで案内していった。ブレイザーは真面目そうな感じの女の子だったんだけど、何か少し強情な節があり「私、お酒飲めるわ!」と結構飲んでいたので「これはめんどくさいことになりそうだ」と心配していたら案の定だった。道も分からずどんどん違う方向へ歩いて行こうとするブレイザーをその都度たしなめて無事宿まで送り届けて入口の階段で「おやすみ〜」と言って僕はキッチンへ行き、冷蔵庫に置いておいた水を飲んで、共有スペースのソファーで少し眠ってしまった。

 

夜食中のスヴェン

夜食中のスヴェン

 

物音で目を覚ますと宿のスタッフのスヴェンが夕飯を食べていて「大丈夫か?」とグラス一杯の水を僕の前のテーブルに置いてくれていた。「あぁ、今何時だ?」「2時半過ぎだ」「45分くらい寝てたか」「今日宿にチェックインした3人組のブラジル人たちは戻ってきたか?」「いや、俺受付にずっといたけど見てないよ」「そうか」

 

やれやれ、こりゃ何かあったかな。グラスの水を飲み「ちょっと出かけてくる、30分くらいで戻ると思うから待っててくれ」「いいよ」「いろいろありがとう、それじゃまた後で」

 

夜の雨の旧市街

夜の雨の旧市街

 

宿の外に出ると雨が降っていた。「どうせすぐ終わる」と傘は持たずにフードを被り、暗がりの小道へ入っていった。

 

つづく

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