ラエコヤ広場から旧市街の外へ
今日はよく天気が変わって行ったり来たりしている。また晴れてきたのでラエコヤ広場へ戻り、今度はラエコヤ広場を通り抜けて、ヴィル門の方まで歩いてみる事にした。
お土産屋の通りを抜けると脇道にレストランのような看板があった。そう言えば、また食べることよりも見て回る事に夢中になりすぎて昼ごはんを食べていない。サラリーマン時代に、カロリーメイトと野菜ジュースだけで過ごした日々が、僕の食への感性を少し無頓着なものにしたかもしれない。死ぬまでに食べられる食事の回数は限られているのに。
しかし今は食事よりも好奇心が勝るのも事実、さっさと広場へ出てしまった。さっきは雲が出ていてどんよりした雰囲気だったラエコヤ広場も、今は天気も回復して建物の色がとても華やかに見えた。
広場を一回りしてヴィル通りを門へ向かって歩いて行くと、また魔法使いのような女性や、豚に鼻息荒く睨まれて今にも食べられてしまいそうな男性を見かけた。
ヴィル門は旧市街の玄関口になってるだけあって多くの人が往来していて、通りの脇は花屋が並んでいた。馬車も待機していたので、ここからラエコヤ広場まで馬車に乗っていくのも面白そうだと思った。
ヴィル門からカタリーナの通路へ歩くと、城壁の下にはセーター屋が並んでいて、白魔道士と思しきローブを着込んだ女性が店番をしていたけど今は夏だし暑そうだなと、少し気の毒に思った。
少し進むと旧市街で最も美しいと言われるカタリーナの通路の入口を通り、通りにかかる石のアーチを見上げて、この通りに連なる伝統工芸品の店を覗いたりしながら、石畳の上をゆっくり歩いていった。
カタリーナの通路を抜けて聖オレフ教会へ向う途中に小雨が降ってきたので、ちょうど近くにあった教会の入口の屋根で雨宿りをしていると、教会から出てきたおばさんが「ちょっと中に入ってみたら?」と奥の教会を指差すので、ここにいても雨には濡れてしまうし、仕方ないからと教会の中で雨宿りをすることにした。
教会の中には全然人がいなくて、僕は席に座ってただ雨が止むのを待っていたら、隅で座って世間話をしていたおばちゃんがヴァイオリンを弾き始めた。
ここで聴いたヴァイオリンの音色には正直驚かされて、少なくとも僕がこれまで聴いたヴァイオリン演奏の中で一番上手いんじゃないかと思ったので、また聴きに来たくなるほどだった。
いくらなんでもこの演奏をタダで聴くわけにはいかないと思ったから、これは寄付の一つでもしなければと財布を出して寄付金箱を見てみると、神様がどうこう優しさや慈悲がどうこうではなく、たった一言『Thank you for good music』と書かれていて「いいぜ、最高だ。気に入った」とそのユーモラスぶりに感心さえしてしまい、手持ちの10ユーロ紙幣を箱に突っ込んで、演奏していたおばちゃんたちに手を振ると、こちらを見ながらヴァイオリンをほんの少し持ち上げてくれた。
演奏が終わり外に出ると雨は止んでいたので、聖オレフ教会へ向かったが今日は休みの貼り紙が出ていた。
歩いてすぐのところから旧市街の外へ出られたので、海でも見てみようと市民ホール港へ歩いていった。
つづく