聖オレフ教会で中世の風に吹かれて
BAR RED EMPERORの店内に入りジョアオ、タイース、ガブリエルを探してみたが見つからない。近くにいた店員に「このあたりにいたブラジル人の3人組を知らないか?」と尋ねてみたが「わからない」と言う返事だった「そろそろ閉店だよ」と言われてしまった。
「もしかして、どこかで入れ違いになっちまったか?」とにかく、閉店てことは、もう店内にはいないはず。外をもう一度探してみるか。全く、どこに行っちまったんだ?
店の外に出て人だかりの中3人を探していると「ニノ?」と呼ばれ、階段の下の所にいたタイースたちを見つけることができた。ジョアオとガブリエルは酔っ払って座ってしまっていた「何でここに?」「帰りが遅いから気になって迎えに来た」
タイースが言うには、宿への帰り道が分からなくなって立ち往生していたらしい。「トーマスとスーザンは?」と聞くと「いつの間にか居なくなってた」らしい。友達を置いてどこへ行ったあのクソガキどもめ「まぁいい帰るぞ、タイースは普通に歩けるな?」「ガブリエル、ジョアオも、ほら帰るぞ」
「んで、ゲームは買ったのか?」「ジョアオが負けてみんなの酒代をおごったわ」「んなこったろうと思ったぜ」「お〜い、ガブリエル突然走るな!」「ってジョアオ、ジョアオそっちじゃね〜こっちだ!」
こうして僕らは、雨の降る旧市街の夜道を4人で歩きながら宿へと帰って行った。
宿の前で呼び鈴を鳴らすと待ってくれていたスヴェンが扉を開けて中に入れてくた。タイースにお礼を言われたが「それよりも3人ともびしょ濡れだけど大丈夫か?風邪ひかないようにして寝なよ」3人とは部屋の前で別れて、僕も少し冷えたのでシャワーを浴びてから寝ることした。
翌朝が出発の予定だったこともあって早めに起きてチェックアウトを済ませ、共有ルームで朝食を食べていると、スタッフのマイコンが「よかったら、この前のパーティーで余ったケーキ食べない?」と言うので「タダなの?」「タダ、タダ。好きなだけ食べて良いよ」「じゃ、もらおうかな。ラッキー。サンキュー」
ケーキを食べてお茶を飲んでると、ジョアオたちも起きてきてチェックアウトを済ませソファーでダレていた。朝食にピザを食べていたけど食欲がないのか重いのか、とにかく食べきれないみたいでピザをもらってしまった。
ジョアオたちはお昼頃の船に乗ってエストニアを出る。僕の方は昨夜はバタバタしてしまったこともあって、エストニアからラトビアに行くバスの時刻を確認していなかった。ネットでバスの時刻を調べてみると時間的には明日にした方が良さそうだった。それに昨日は祝日で行けなかった場所もあったので「マイコン、今日部屋空いてる?」「ちょっと待って、部屋移るけど平気?」「平気平気!じゃもう一泊するわ」「そしたらベットメイクもあるから午後に移動して」「了解!」と急遽もう1日タリンに滞在することにした。
ガブリエルたちの出発までは一緒にいて、みんなが宿を出るときに僕とジョアオ、タイース、ガブリエルとマイコンで宿の前の通りで一緒に記念写真を撮った。僕以外全員ブラジル人でタリンで集合写真。一瞬しか一緒にいられなかったけど、3人とはなかなか良い思い出ができた。3人を宿の前でマイコンと見送ってから、僕はラトビアにいる友人にメッセージを送ったりして少し経ってから聖オレフ教会へと向かった。
宿の前のLAI通りをまっすぐ歩いていくと健康博物館という謎の建物があり、それを過ぎると聖オレフ教会が見えてきたので早速入口から中に入ってみた。
受付で2ユーロの展望塔のチケットを買った。塔に上がるのは後にして先ずは教会内を見て回った。
平日のお昼時だったこともあって教会内には人が少なく、見て回るのはとても楽だった。
教会内には何かのイベントか学生活動のような写真がいくつか飾られてあった。
その中には「何故お前がそこにいる?」と言う様なうらやましい写真や、妙に勝ち誇った顔に敗北感を感じる様な写真が飾られてあり、一人旅の僕としては少し悲しい気分にさせられてしまった。
この淀んだ気持ちを晴らすべく、塔の階段をかけ登った。壁のくぼみで降りてくる人をやり過ごしながら、ただひたすら頂上を目指した。
聖オレフ教会の塔は旧市街の中心にあるので、ここから旧市街の全てを見下ろし眺めることができる。遠くにはタリンの新市街エリアも見えた。さすがに旧市街で一番高い建物だけはあって、素晴らしい風景だった。
塔を回る通路は二人分くらいの幅しかないため、すれ違う時にはどちらかが塔の屋根に体を預ける様な形になった。
手すりが若干心もとないこともあって、カメラを落としてしまうんじゃないかと心配になったけど、逆に遮る網なんかもないので、気をつけながら撮った写真はとても鮮明に写すことができた。
塔の上では海から風が吹いていて、風の音がよく聞こえた。塔の通路をぐるっと回ると、僕がフィンランド湾を眺めていた市民ホール港が見え、近くのターミナルにはフェリーが数隻停泊していた。その時、僕らがチケットを買ったターミナルDから出航するフェリーの姿が見えた。
もしかしたら、あの3人も今頃あのフェリーの中なのかもしれない。僕は塔の上から、タリン港を離れて海の向こうへいくフェリーを見ていた。
つづく