アムール川を越えて
僕の乗った電車は、一夜明けてどこかの駅に停車した。昨夜に雨が降ったのだろうか、地面は少し濡れていた。ここはどこで、今は何時なのだろう。ホームに降りてあたりを見回してみたが、よくわからなかった。肌寒かったので、列車に戻りシーツを被ってもう一眠りすることにした。
2時間ほど経ってピロビジャンに到着した。寝ている間にアムール川を過ぎてしまったみたいだ。この駅でチョンさんは降りていった。それと僕と一緒にウラジオストクから乗ってきて隣のシートにいた若い女性も降りていった。
少し腹が減ったのでバッグからカップラーメンを取り出し、通路にあるサモワールで熱湯を入れて食べた。今日はチキンだ。プラスチックのフォークが初めから中に入っていたのは便利だと思った。通路でお湯を入れてる時に見かけた車内販売のリストには、ソチオリンピックのマスコットキャラクターのグッズがあった。値段は全般的に少し高めだった。
カップラーメンを食べ終えた後は、ぼ〜っと外の景色を眺めていた。車内はすごくのんびりしていた。たまに車内販売のカートが通ったり、赤ちゃんがお母さんと一緒にトコトコと通路を歩いていて、みんなを和ませていた。
しばらくしてチナさんが「ご飯だよ」と呼んだので、チョンさんと入れ替わりで僕のシートの下に来たおばあさんとチナさんと一緒に昼ごはんを食べた。みんなが持ち込んだ食事をテーブルに広げて、僕はパンとジャムを、チナさんは果物と野菜を、おばあさんは肉を出した。チナさんが野菜を切り、僕はサモワールでみんなの分のお茶を入れて来て、みんなで食べた。
食後は片付けをしてテーブルを拭き、ゴミを捨ててお茶を入れなおした。チナさんは、カバンからひまわりの種の袋を取り出すと、自分の読み終わった雑誌の上に広げた。「食べな、食べな」というのでひまわりの種を初めて食べてみたが、チナさんたちの様にうまく種を口先で割って中身を取り出して食べることができず、まごついていると、チナさんとおばあさんがキョトンとした顔で見ていたので「口に何か付いてるか?」と尋ねたら「食べたことないの?」と聞いてきた。「日本人はひまわりの種は食べないな」と答えると、なんとも不思議そうな表情をしていた。
その後、チナさんが「こうやって食べるんだよ、やってみ」と教えてくれたので、言われた通りにやってはみたものの、全然上手くならず。食べるのが下手くそなのがおもしろかったのか、二人には笑われてしまった。
つづく