シベリア鉄道中部クラスノヤルスク
車両連結部で外の景色を見ていると、エカテリンブルクまで行くアレックスがタバコを吸いに来た。連結部なら吸って良いと思ってるのか知らないけど、車両内禁煙なんだけどな。
席に戻るとアレクサンダーが夕飯を食べるところで「一緒に食べよう」と言うので相席したら、ビニル袋から鳥の丸焼きを出してきて少しびっくりしてしまった。切り分けてくれたものをいただいて食べた。アレキサンダーは皮は食べずに残していたので「要らないならもったいないから」と貰った。
アレクサンダーは箱で角砂糖を持っていて、いつもブルーベリーティーに三つ角砂糖を入れていた。食後にお茶をいただいた時に、僕ももらったけれど、三つは甘すぎで入れすぎなような気がした。
エニセイ川の鉄橋を渡ると、クラスノヤルスクに到着した。しばらく停車するようなので、列車を降りて、深呼吸をして体を伸ばした。なんかあっさりではあったけれど、やっとウラジオストクからモスクワ間の半分を越えた。
アンドリューはこの駅で降りていった。アンドリューはよく笑う人だった。そして笑うと金歯が見える、だからだいたいいつも金歯が見えていた。彼は列車が走ってる時に車体が少し傾き、座席から布団ごと滑り落ちてしまったおばさんを、一緒にいたサングラスをかけたスキンヘッドの男性と助けて、布団を敷き直したりするような親切な人だった。当たり前かもしれないけど、それが自然とできることはすごいことだと見ていて思った。僕が挨拶をして別れた後も、ホームの階段を登るところで、重そうな荷物を持った人をサッと手助けをしていた。
クラスノヤルスクからはシベリア鉄道中部の交流区間を走る列車をよく見かけるようになった。また、背負うくらいの大きい荷物を積み込む人たちが増えてきて、この人たちの姿にアジアの雰囲気を見た。ここからもっと色んな民族が混ざり合っていくような、そんな空気を実感していた。
アレックスはパンツ一枚でいびきをかいて寝ていた。僕はアレクサンダーと話をしていた「兄弟がいるか」だとか「仕事は何をしてるの」だとか「独身なのか」と聞くので「独身だよ」と答えた。「結婚したくないのか」「いや、結婚はしたいな」「じゃあ、俺のいとこと結婚を考えてみないか?」と言うので「ロシア人の女性は素敵だし、アレクサンダーも良いやつだから悪い話じゃないが、気持ちだけもらっておくよ、ありがとう」
モスクワ時間に戻り、今は夜の10時くらい。アレクサンダーにそろそろ寝るよと伝えて、シートに寝っ転がった。あ〜アレックスのいびきがうるさい。
つづく