朝焼けに踏み出し飛んで
首都モスクワ到着まで12時間を切った。僕のシベリア鉄道の旅もそろそろ終わりみたいだ。列車は一つまた一つと目的地のモスクワへ向かって進んでいた。日の出前に停車した駅で目を覚まし、外に出てみるとエディック達は外の白熱灯の下でタバコを吸っていた。
声をかけると、もうあと少し夜明け頃に列車を降りるようなことを言っていた。僕はエディック達を見送ろうと、シートに横になりながら次の停車駅まで起きていることにした。車内はいつもと同じで静かだった。1時間ほど経つと列車は霧がかった草原を走っていた。幻想的な景色だった。もうすぐ夜明けだ。
徐々に空が赤く明るくなり、遂に僕のシベリア鉄道最後の夜は終わった。
下の席のおばさんが起きてきたので「おはよう」と言った。少し早いけど洗面所で顔を洗い歯を磨いて身支度を整えた。念のためにとみんなが使っていない早朝の間に、コンセントで充電を済ませておいた。すると列車は突然、森の中で少し停車した。
僕は扉から体を出して森の間から登る朝日を眺めた。列車は少し停車したあと、また森の中を走り始めた。通路でエディック達が降りるであろう次に停まる停車駅を確認してシートに戻った。
しばらくして列車がどこかのヴァグザールのホームに入った。窓から駅名を見たたけど確認した次の停車ではなかったので「ここじゃないな」ともう一度シートに横になっていると、僕の車両にいた軍服の人が降りる準備をしていた。「まさか!?」と思って通路に出て外を見てみると、エディックとジョナが整列するところだった。
僕は思わず列車を飛び降りてしまった。ホームを走って彼らの元へ行ってしまった。彼らを見つけると「また会おう」と約束して握手をした。上官の人が「ダワイ!ダワイ!(戻れ!戻れ!)」と叫んで怒っている。エディック達も笑いながら「ダワイ!ダワイ!(急げ!急げ!)」と言って列車を指さした。僕は辺りを見回した「ホームに一般客が誰も降りてない?」「しまった!ここは一般客が降りる駅じゃないのか!?」乗り遅れないように、すぐに列車に飛び乗った。車掌にも怒られるぞこれはと思っていたら、アンドリューがタバコを吸いに降りていたみたいで、僕よりも戻るのが遅かった彼が僕の分まで怒られるはめになった。すまん、アンドリュー。
列車はすぐに動き始めた。僕は窓から彼らの後ろ姿を見送った。エディックやジュナたちはもう行ってしまった後だった。
つづく