木造建築博物館タリツィ
食後にお腹いっぱいになって横になって休んでいたら、アーニャが遊びに来た。「にのさん、元気ですか?昨日は眠れましたか?今から出かけますよ!」「え?出かけるの?今から?」と言う間もなく「はいはい」と車に乗せられ、昨日行ったリストビャンカとイルクーツクのちょうど中間くらいにあるタリツィに出かけることになった。
車の中でガイドブックを読んだらタリツィのことが書かれていて、18世紀頃の生活を再現し展示している屋外博物館らしい。要するに民族博物館みたいなものかと思っているうちに着いてしまった。タリツィに着くと、今日はアーニャの友達のマーチャも家族と一緒にここに来てるらしく、カッサ(チケット売り場)の前で合流して一緒に見て回った。
ガイドブックには博物館と書かれていたが予想以上に広くて、早くも今日は歩き疲れそうな予感がした。ともあれせっかく誘ってくれたんだからと、気を取り直して歩き始めた。
森の中にも木造の古い建物や器具の展示があったけれど、説明書きがロシア語だけだったので、どういうものかは全然わからなかった。
森を抜けるとアンガラ川に出た、イルクーツクからここまで流れてきて、それでバイカル湖につながってるらしい。さらに進むと、農耕器具のようなものが展示されていた。
説明用の絵があったり英語の説明があったものは、まだなんとなくわかるけど、それ以外はほぼお手上げだった。ここには古い木造の教会や学校、城壁や民家などの建築物も展示されていた。民家のようなものはイルクーツクの市内で見かけたものに、少し似ているような気もした。
歩いていると先に見て回っていたマーチャの家族といとこに追いついたので、ここからは一緒に見て回った。お兄さんのミーチャと、いとこのサムとは少し英語が通じたが、おばあさんやマーチャのお母さんのタチアナさんとは言葉は通じなかった。でも、本当になんとなくではあるけれど楽しく過ごせたような気がした。みんな親切で気さくだったのが良かった。
このあたりからユリアが建物の説明をし始めて、色んなことを教えてくれたんだけど、説明が長くて授業みたいになって理解するのが大変になってきた。木造教会があって中を覗いてみるとイコンがあった、昔からロシア正教の建物は特徴的な形をしてるんだなと感じた。
またモスクワ行きのシベリア鉄道の中でサモワールにお世話になりそうだ。
少し疲れてきたので休んでいると、ディマとウラジーミルさんが「何か欲しいものある?」と聞いてきて「いや、特にないけど」と言ったら「これお土産に」とアザラシの笛を買ってくれた。嬉しかったけれど「なぜこれ?」とつぶやきながら笑ってしまった。試しに吹いてみると結構な音がした。
少し歩いて広場に出ると、マーチャのおばあちゃんがサムとミーチャとブランコで遊んでいた。マーチャに「おばあちゃん何歳なの?」と聞いてみたら「84歳だよ」と言うので「84歳でこれか〜」
その頃のディマはというと馬に乗っていた。ブランコで遊び終わったアーニャが「にのさん、お土産みましょう」と僕をお土産屋さんに連れてってくれた。白樺細工のお土産がたくさん置いてある中で、妙に気になる顔のお土産もあったが、要るか要らないかで言ったら要らないので特に買うことはしなかった。
お土産屋から出ると、青いTシャツを着てオレンジのスカーフを巻いた人たちがいて、竹馬のようなもので遊んでいた。それを見ていた僕は「そう持って乗るもなのか?」と思っていたら、アーニャやミーチャたちも竹馬で遊び始めた。それを見て「やはり、そうなのか。日本とは違うな」と思った。
マーチャの家族もアーニャたちもとにかく元気に遊んでいたが、僕はずっとガイド付きで終始「わかった?わかった?」だったので消耗していた。
ディマとウラジーミルさんも疲れたみたいでベンチでうなだれてしまったので、僕とユリアとアーニャとマーチャで川沿いまで行ってきた。
引き返してきたら、回復した二人がブランコで遊んでいた。ユリアはそれを見て呆れていた様子で「ユリアの方がディマのお姉さんみたいだな」と言ったら、ため息をついていた。苦労してそうだなと思った。
来た道を引き返してカッサの前まで戻ってくると、最初に見かけた犬はまだ同じ場所にいて、少し疲れたのだろうか、今は眠そうにしていた。
僕も少し疲れた。マーチャと別れて車に乗ってイルクーツクに戻った。アーニャは家に帰るようだったので、明日の夜にイルクーツクを出て行くと伝えておいた。
つづく