ウラジーミルさんの手料理とイリーナさんの畑
朝起きたら少し雨が降っていた。今日も朝はナターシャさんと二人で朝ごはんを食べた。はちみつ入りのお茶は温かかった。ナターシャさんはお茶が好きらしく「色々あるの」と持っているお茶を見せてくれた。そして僕に「列車の中で飲みなさい」と緑茶のパックをくれた。「スパシーバ(ありがとう)」と言って受け取った。明日の夜、僕はここを出て行く。
今朝はウラジーミルさんが早めに起きてきてて「今日の昼ご飯は俺が作るぞ」と鳥肉を使った料理の仕込みを始めた。「これを使う」と言って見せてくれた調味料が照り焼きソースと酢だったので、多分、昼食は鳥の照り焼きになるんだろう。ナターシャさんが言うには、ウラジーミルさんは時々料理をするから助かるのだとか。
ウラジーミルさんが料理の仕込みを終えた後、起きてきたディマとウラジーミルさんと三人で駅までモスクワ行きのシベリア鉄道のチケットを買いに出かけた。車内にはディマにあげたお守りが飾ってあった。
車にガソリンとタイヤに空気を入れるために、一旦ガソリンスタンドに向かうことになった。走る車から外を見ていたら、佐川急便のトラックを見かけた。おそらくこれも日本から流れてきた中古車だろう。
ガソリンスタンドに寄って、ディマたちがガソリンとタイヤに空気を入れてる間は、特に何もすることなく暇だったので、知り合ったおっちゃんと話したり、売店の中を見てみたりしていた。タイヤの空気が入れ終わると、窓からおっちゃんに手を振って僕たちは駅に向かった。
ディマに「ウラジオストクではクレジットカードでシベリア鉄道のチケットを買えなかったから、先にATMに寄ってくれないか」と頼んだら、駅の近くの旅行会社ならクレジットカードでもチケットは買えるだろうし、少し安いと思うからそっちへ行ってみようということになった。その旅行会社で、あっさりとモスクワ行きの明日の夜発のチケット手配が済んでしまった。
チケットを買って家に帰る途中、ディマが「ここでもアザラシは見れるよ」と小さな水族館みたいな場所の前で車を停めた。残念ながらこの日はお休みだったから、僕は「まぁ仕方ないさ、ありがとう。行こう」と言ったら「時間があればまた明日くればいいさ」とウラジミールさんが言うので、そんなにアザラシにこだわってる訳じゃないのに、なぜかまた明日も来ることになってしまった。
昼食にはまだ少し早いのか、ちょっとウラジミールさんの友達の家に寄って行くことになった。その人の家では家庭菜園をやっているらしい。着くと優しそうなおばさんと、少し無愛想な感じのおじさんが迎えてくれたので、簡単にロシア語で自己紹介をしてみた。その後、中を案内してくれて、きゅうりをもらったりラズベリーを食べさせてもらったりした。他にもピーマンやかぼちゃ、玉ねぎを作っていたので、家庭菜園というより小さな畑みたいな感じだった。
親切にしてもらったお礼に、おばさんにみんなで撮った写真を渡したら喜んでもらえて良かった。おばさんは朝顔も育てていて、とても綺麗だった。なんか夏だなと思った。みんなで少し話をしてから「パカー(じゃあね)」と言って家に帰った。おじさんが「パカー(じゃあね)」と返してきた時には、発音と顔のギャップに少し笑いそうになってしまった。
家に着くとテーブルの上にオーブンで焼いた鳥の照り焼きがあって、ナターシャさんが昼食の準備をしてくれていた。もらってきた野菜を切り、ナターシャさんが作ってくれていたジャガイモのバター炒めも出てきて、みんなで昼ご飯を食べた。ウラジーミルさんの料理もナターシャさんの料理も、おばさんの野菜も全部旨かった。
「フクースナ(おいしい)!フクースナ(おいしい)!」しか言ってなかった。ナターシャさんが「クーシークーシー」と言って料理を勧めてくるので、おそらくこれは「もっと食べなさい」という意味かなと思い、遠慮なくおかわりした。
食後にガイドブックを見ながら「ダ スヴィダーニャ(ごちそうさまでした)」と言ってみると、ナターシャさんがうんうん頷きながら「バジャールゥスタ(どういたしまして)」と返してくれた。
言葉が通じるというのは面白いものだ。
つづく