スプートニクとの遭遇
朝起きると毛布がかけられていた。どうやら早朝にチナさんが毛布をかけてくれていたみたいで、お礼を言った。昨夜の雨のせいか窓の外は霧がかっていた、現在の気温は23度。少し寒さを感じた。
暖かいインスタントスープを作ってチナさんたちと朝食を取っていると、後ろから声がした。昨日の夜に乗ってきた男たちの一人だ。ロシア語だったので初めはわからなかったが、どうやら僕に声をかけてきたみたいだ。男の名前はミハイルと言った。ミハイルは「これ飲んでみろよ」とグラスを差し出してきたので水かなと思って飲みほすとウォッカでむせてしまった。寝起きに強烈な酒で一気に目が覚めた。
グラスを返すとミハイルは去っていった。チナさんが「旅行者に酒を飲ませて酔わせてから、パスポートや貴重品を盗む人もいるから気を付けなさい」と小声で僕に言った。次の停車駅には、お昼頃に着くようで、僕はしばらく横になることにした。それと、何かとお世話になっているチナさんに持っていた本のしおりをあげたら、使ってくれていたのは嬉しかった。
お昼過ぎに列車が駅に止まり、乗客は外でタバコを吸ったり、売店で昼食を買ったりしていた。外にいた人の中には長袖の服を着ている人も見かけて、日は出ているがやはり少し涼しい。
駅のホームには歩道橋がかかっていたので、登って景色を眺めることにした。霧も晴れ、太陽が出て、雲は少し出ていたけど見晴らしが良く気分が良かった。僕の乗ってきた列車の隣に停まっていたのは、多分シベリア方面行きのロシア号で、運が良ければ次の機会に乗ってみたい。
発車のアナウンスがあってもロシア語でわからないので歩道橋を渡りきることはしないで、乗り遅れない様戻ることにした。列車の乗り口に戻ると、またミハイルに声をかけられた、周りにいるのはミハイルの仲間たちのようで、昨日の夜に乗ってきた男たちだった。それに気づいたチナさんも来た。チナさんはきっと僕のことを気にかけてくれているのだろう、ありがたいことだ。
そして最後に来た髭面の男が僕に話し始めた。
つづく