世界一周の終わりの始まり

世界一周用のバックパックとショルダーバック

昼食を済ませ、荷物の確認を終えた僕は自分の部屋で寝っ転がり窓から外を眺めていた。天気は快晴。でも、僕はこれからの旅のことを考えては憂鬱になっていたんだ。

 

出発時間までは、まだ6時間もある。荷物は3回も確認してしまった。それでも何か見落としてしまったものがあるかもしれない。けれどもうそれは、その時に買うなりなんなりすればいい。気持ち以外の準備は思いのほか万全だった。

 

世界一周に旅立つ人たちは、出発の時どんな気持ちなんだろうか。希望に満ち溢れているような感じなんだろうか。僕は、今すぐにでも止めてしまいたいくらい気分が乗らない。玄関を開ける前から、もう行きたくないと思っている。怖い。そんなことを考えているうちに陽は沈んでしまった。

 

世界一周用のバックパックとショルダーバック

世界一周用のバックパックとショルダーバック

 

夕食は自宅で家族ととんかつを食べた。今思うと願かけの意味もあったのかもしれない。何に勝つ必要があるのかはわからないけれど。それでも気持ちはありがたかった。何よりおいしかった。食器を片付けて洗いものをし、テレビを見ながらお茶を飲んだ。出発までは家族と少し話をして過ごした。

 

出発の時間が迫ってきた。家族にもらったお守りと貴重品だけもう一度確認して、バックパックを背負った。靴紐を結んで、ショルダーバックを持ち玄関を出た。家族は「行ってらっしゃい、元気でね」と見送ってくれた。僕は「それじゃあ、ちょっと行ってくる」と答えて家を出た。

 

電車に乗るために駅へ向かった。陽が沈んでも、まだ少し蒸し暑かったが、時折ふいた風は涼しく、夏の夜に聞こえる虫の声を聴きながら歩いた。今日は何故か当たり前のことばかり考えてしまった、普段なら考える必要のないことばかりだ。名残惜しさなのだろうか、後悔だろうか。駅までの10分、旅を諦める口実を探してみたけれど、あっさり駅に着いてしまったので、仕方がないから切符を買って電車を待った。

 

電車を待つ駅のホーム

電車を待つ駅のホーム

 

やがて来た電車に乗った。帰宅ラッシュを過ぎたこの時間帯の車内は、席に座れるくらいには空いていて、僕は端の席に座りバックパックを足元に降ろした。するとすぐにドアが閉まり電車は走り始めた。次の目的地までは1時間ほどかかるだろう。

 

2014年7月25日。2年前の夏の日の夜。この日、僕は旅に出た。友達や家族、自分さえもまだ行き先を知らない長い旅に。

 

つづく

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